この病気は収入源となるタバコの収穫に甚大な被害を与えるので、オランダ人にとってきわめて重要な問題であった。
Mは感染したタバコの葉をつぶし、その抽出物を健康なタバコの葉にこすりつけて病気をうつした。 Mは病気に関係した成分は酵素かまたは毒素に違いないと考えていた。
その後、Mと共同研究していたオランダの土壌微生物学者M・Bが、さらにこの謎を明らかにした。 彼は、感染した葉の抽出液を薄めたものを、既知の細菌をすべて除去するだけ十分小さな孔をもった磁器製の浦過器に通した。
こうして源過した液は、感染力をもっていただけでなく、第二の植物に感染したあとも最初の毒性を回復したのである。 この事実が証明したことは、この病原体が増殖しうるということ、ゆえに、それは酵素や毒素ではなくある種の生きた微生物であるということであった。
その後、これらのいわゆる「見えない微生物」の本質について激しい論争の期間があったが、ついに一九0三年、Pの後継者としてパリのP研究所の所長となったP・Rが、科学的な言葉によって「見えない生物」の特性を記述した。 彼は三つの重要な特徴を定義した。

痘過性である。 彼らはサイズが小さいために、細菌を除去する憶過器を通過できる。
目に見えない。 彼らは光学顕微鏡では見えない。
非培養性である。 彼らは細菌の培養では増殖しない。
このような微生物を記述するために「憶過性病原体」という言葉がつくられたが、それでもその後三十年間、ウイルスはほとんどの科学者たちから単に非常に小さな細菌としてしか見なされなかったのである。 一九00年から一九三0年代にかけて、ウイルスの物理的な性質が明らかになってきたが、彼らの感染と増殖の方法は依然謎のままであった。
しかし漏過器の孔隙の改良によって、ウイルスのサイズが正確に決定できるようになっていたし、また、新しい細胞培養技術によって、多くのウイルスを培養細胞を増殖させ、精製し、そして生きた動物に病気を引き起こさせることが可能になっていた。 二ワトリの旺を取り囲む膜にウイルスを接種すると三、四日後に目に見える効果(プラーク(斑))を与えることから、ニワトリ雁を含む卵はある種のウイルスを増殖させるための便利な場所であることがわかった。
これらプラークの顕微鏡検査によって、ウイルスが生きた細胞の内部で増殖し、感染した細胞を一般に殺すということが理解されるようになったのである。

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